海外で活躍する多くの「ゴジラ」の紹介を

日中交流研究所長 段躍中

 

 

 松井選手の活躍が目覚ましい。イチロー選手や松坂投手の活躍も大きいが、松井選手は「ゴジラ」という愛称があるためか、毎日NHKで大きく取り上げられている。

 松井選手が活躍することによって、日米間の親密さは増したように思われる。松井選手自身の貢献もあるだろうし、日本人が「ゴジラ」を見て、米国に親しみを持つ人も増えたことだろう。

 

 しかし、海外で活躍する日本人は「ゴジラ」だけであろうか。常々ニュースを見ながらそういった疑問を抱えていたのだが、たまたま友人が送ってきてくれた紺野大介先生の記事に膝を打った。実に、賛同する部分が大きい。そこにはこう書いてあった。

『NHKの夜七時台のニュースでは、イチローや松井の毎回の打席シーンを毎日放映している。少し割愛して、前述のような人物※を選び、何をしたか、結果はどうだったかではなく、どう生きたか、どのような人格だったか等の「人間としての価値」を、時間を割いて子供達に知らせたいと思うのは私だけであろうか。』(『選択』2007年4月号、P91

※(筆者注:引用箇所の前に、ショパンコンクール第二位の内田光子、チャイコフスキーコンクールバイオリン部門優勝・諏訪内晶子、ピアノ部門優勝・上原彩子、コンペティションのない世界ではユダヤ人を救った杉原千畝、教育者の斎藤喜博、公害問題の宇井純等の紹介があった。)

 

 考えてもみてほしい。米国で活躍している日本人を10人挙げてほしいと尋ねられたとき、「ゴジラ」・イチロー以外の名前を思いつくだろうか。もしかすると野球選手の名前ばかり列挙してしまうのではないだろうか。

 これは、日本のマスコミの問題点の一つだと思われる。マスコミの海外報道がスポーツに偏るのは、喜ばしいことではない。スポーツ以外の他の分野でも、外国で活躍している日本人の活躍を少しでも、短くとも、報道するべきなのではないだろうか。特に公共メディアとして、NHKにその役割が大きく求められると考える。

 この現象は、何も米国に限ったことではない。例えば、中国で活躍している日本人は、卓球の愛ちゃん以外にもたくさんいるが、どれだけの人がそのことをしっているだろうか。私は弱小の出版社日本僑報社の編集長も兼任しているが、日中両国に貢献した人々が無名のまま消えていくのが耐えられず、売れない本を出版した(『新中国に貢献した日本人たち』『永遠の隣人-人民日報に見る日本人』『在日中国人大全』等)。もちろんNHKのニュースのように反響があるわけではないが、それでも「中国で活躍した日本人がいるとは。阿倍仲麻呂と愛ちゃんぐらいしか知らなかった」との声が寄せられた。二千年にもなるといわれる日中交流において、2名しか知られていなかったのである。

 

近年のことでも、「友誼賞」(中国政府から授与される最高レベルの栄誉)を受賞した日本人は、170人以上(新華社通信2004924日付)以上いる。私が拙い日本語でニュースを聞いているということを差し引いても、日本でこのニュースを知っている人は何人いるであろうか。私は、もしかしたら誰も知らないのではないかとにらんでいる。

 

 海外で活躍する日本人を紹介するメリットは、いくつかある。日本人としての誇りが高まる。紺野先生が指摘するように、「人間としての価値」を子供達に伝えられる。そして、知るということによって、日本人が活躍する場所と日本の友好が強化される。知らなければ、それは単なる余所の国である。知ることによって、親しみがわき、活動を応援したいという気持ちになり、友好が深まるのである。

そして、それは難しいことではない。スポーツに加えて、他の分野にも目を向ければ、「ゴジラ」は実はたくさんいるのである。

 

 と、ここまでNHK及びメディアの批判を連ねてきたが、最後に来日してから日本のメディアに感心したことを書き記したい。

 それは、事故・事件・災害時における報道である。日本のメディアは、例え飛行機事故や地震などの災害が外国であったとしても、必ず「日本人は含まれていない模様」と安否を報道する。これをナショナリズムの表れと見る人もいるだろうが、人権や命を大切にしているといった点では思慮深い配慮と見てとれるのではないだろうか。

 日本のメディアには、良い点を保持しつつ、改善すべき点は改善をお願いしたい。