在日外国人の子育てにもっと支援を

 

日中交流研究所所長 段躍中

 

 

 増え続けている在日外国人の数。今では外国人登録者数は200万人を越える。家族を持っている在日外国人が最も困っているのは、日本での子育てである。在日外国人の子育てに、もっと支援を。

 

文化の違いによって、外国人の親、特にお母さん達は、子育てに苦労している。一例を挙げると、子供を保育してもらうには、「お弁当」と「ハンカチ」が必要である。それらは昼食であり、手や汗を拭くタオルだと思えばどうということはない。しかし、それらには作法が必要なのである。

ご存じの方も多いと思うが、ハンカチは幼稚園毎に細かな決まりがある。「お弁当」は、楽しいランチを食べながら、色や形、美味しさを比べあっていると聞く。「お弁当」は、三色(赤・黄・緑)の彩りがあるとよく、リンゴはウサギさん、ウインナーはタコさんであるほうが望ましい。美味しいことは必須である。

外国人のお母さんは、そのようなことを全く知らない。昼食に食事を携帯していく習慣がない国も多い。中国では、学食など学校で食事を取るのが一般的であった。持っていく場合も簡単なものが多いように思われる。日本の「お弁当」のような色良し、見た目良し、味良しの芸術品ではない。

 外国人のお母さん達は頭を悩ませる。何を入れるべきか、誰に聞けばいいのか。聞いたとしても、私の日本語でわかるのか。悩んだ結果、自慢の料理を詰めて子供に持たせたとしても、それは日本の「お弁当」とは明らかに違うのである。

 

 また、外国人を悩ませるもう1つの大きな問題が、子供の語学問題である。まず、母国語の教育に関する支援が乏しい。在日中国人の子供を例に挙げると、中国語を学ぶことができる正規の学校は東京、横浜、神戸といった都会に集中している上、数が少ない。そのため、受け入れには人数制限があり、通うことができない子も大勢いる。

 子供は、日本での文化や慣習の違いに戸惑い、母国語を学ぶことができない。「お弁当」は一例だが、お母さんは文化や慣習の違いから発生する問題について、得られる情報が少なく、相談する相手がいない。

 

 そのことから起きた悲しい事件が、長浜園児殺害事件(2006年)である。中国から日本人夫に嫁いできた被告によって幼稚園児2人が殺害されたという事実は許し難く、ご冥福を祈るばかりである。だが、その背景には、在日外国人の子育て問題がある。

 報道で知ったことから述べると、被告は日本語を話せたが、相談相手がいなかったという。加えて、家庭では家事も育児も行っていたという。それが悪いというのではない。しかし、中国では女性は育児、男性は家事という分担がなされている。被告にとっての慣習を伝えたり、他の人と話したりする機会はあったのだろうか。

 

 問題を解決するために、区役所や学校で、支援システムを確立することはできないだろうか。子供がいる外国人家庭に向けた支援講習会を設けるというのはどうだろう。区役所などの行政が助成金を出し、例えば「お弁当作り講習会」などを開催する。子育てを終えた、または子育て中のお母さんに参加してもらい、外国人のお母さんに伝授してもらう。

 その次の会は、逆に外国人のお母さんが母国の料理を伝えるというのはどうだろう。料理だけでなく、子育ての苦労や問題、互いの文化など話し合う。国際化が加速する中、身近なところで交流できる。ネーミングは「ママを支援するママの会」などはいかがだろう。

 形は、問わない。サークルでも、町内会でもよい。行政の支援の下、日本人も外国人も参加し、コミュニケーションできる「固定した場所での定期的な開催」が、問題の解決に役に立つと思われる。

 

 それらの情報は、マスコミにも取り上げてもらい、社会共通の財産として役立てる。マスコミに加えて、エスニックメディアを活用するのも手である。子育てに役に立つ情報を新聞やラジオなどのエスニックメディアに提供し、報道してもらう。エスニックメディアも喜んで報道することだろう。

 

 母国語の問題は、学校で授業の一環として外国語を教えるのは、どうだろう。例えば、週末に中国語を習いに行く在日中国人の子供は多い。そうではなく、1つの授業として、時間割に組み込むのだ。

 これはナショナリズムの発露から、述べているのではない。これからの若者は、3カ国語ぐらい話せた方がよい。中国語を話せる子供が萎縮して話せず、日本の子供も色眼鏡で見るという社会ではなく、私は日本語も中国語も英語も飛び交い、世界に飛び出していける子供を、社会で育てていきたいと思う。

 

これらは、外国人の問題だけはない。日本社会の国際化は、止まることがないだろう。日本における少子高齢化問題は、今後、更に深刻になっていくと思われる。加えて、在日外国人の数は増加を続けるだろう。在日中国人の数を取ってみても、昔と比べると10数倍となっている。今日では総数が約60万人であるが、近い将来には100万人に達するだろうといわれている。

外国人が安心して暮らせる国は、外国人が力を尽くせる国である。これからの日本の国際化のもと、安定して暮らせるならば、外国人による日本への貢献はますます大きいものになる。

そして、子育て支援があると助かるのは、外国人だけではない。子育て支援が充実していれば、子育てがしやすいのは日本のお母さんも同じではないだろうか。外国人が住みやすい社会は、日本人にとっても住みやすい社会だ。